不思議な事に、
急にいいところばかりが浮かんできて、
俺をその気にさせた要素は薄れた。
おまえのいいところたちが、俺の胸を少しずつ削っている。
俺の良心、あるいは偽善の塊みたいなものが、
俺を責めている。
どうにもならないよりは、
何もやらない方がマシ
先輩の言葉が頭の中で回っている。
これで良かったんだ。
そんなことをわざわざ言い聞かせなくても、
あの瞬間からそれは分かっていただろう。
おまえは認められない、
理想がないと言うくせに、誰よりも理想が高いおまえは。
いずれ破綻してしまう。
これは無理だった。
自然体を愛せなかった。
ありのままのおまえを。
変わることを前提に申し出た。
ありえない、
人が変わることほど難しい事はないのに。
俺ならなんとかできると自惚れていた。
できるわけがない、
人を何だと思っているんだ?
最後まで信じられなかった。
信じ続ける強さがなかった。
誠意を見せて欲しかった。
俺はそういうのがないとダメなんだってことを、
理解して欲しかった。
分かったような気になって、
ぜんぜん何にも分かっていなくて。
いつの間にか会話が説教になってしまっていた。
俺の当たり前を押し付けていた。
息苦しかっただろう、
ごめんね。
でも今のおまえはどうしても認められなくて、
なんとか俺の中の理想に近づけたくて。
冷静な俺が俺に問いかける。
本気なのか?
将来性はあるのか?
持続性はあるのか?
そんなこと、
本当はどうでもいいのかもしれない。
「お互いのためにならない」って便利な言葉だ。
もはやお互いのことなんて考えていないくせに。
必ずもう一度会わなければならない。
残した事がある。
あの日の俺たちは、
こんなことになるなんて思いもしなかった。
でも手をつないだとき、おまえは直感的に、
こうなることに気付いていたのかもしれない。
手をつないでいないと、
どっか飛んでいきそう
・・・分かってんのなら、
手を離さなかったらよかったのに。
コメント